鳥
ネーネー(ハワイガン)について
ネーネー(Branta sandvicensis)は、キャプテン・クックがハワイに渡来したころ(1778年)には、2万5千羽ぐらいいたものが、1940年代には50羽となり、1952年には30羽だけになってしまいました。
生き残ったネーネーたちは、飼育されていた鳥です。 生き残った30羽から、個体数を増やすために人工的に繁殖させて、1949年から1978年にかけて1700羽以上放鳥されました。その後、何百羽も放鳥されています。この努力は今日でも続いています。
これまでの努力の結果、現在(2006年)ではカウアイ島、マウイ島に、モロカイ島、ハワイ島に、合計1600羽ぐらい生息しています。カウアイ島が一番多く、830羽です。ハワイ島は480羽で、その内180羽ぐらいがハワイ火山国立公園に生息しています。
絶滅寸前まで減少してしまった原因は、移入動物により捕食されるようになったことだけではなく、過剰な狩猟や、農地、牧場、住宅などのために生息に適した環境が減少してしまったこと、帰化植物が増えて、本来餌となる植物が減少してしまっているということもあります。
放鳥したネーネーには、固体識別用の足環が付いていますが、自然界で生まれたネネも捕獲されたものには足環がつけてありますが、足環がついていない鳥は、自然界で生まれたものだとわかります。
ネーネーとアメリカ北部に生息するカナダガンの祖先は同じだと言われています。50万年ぐらい前にハワイに渡ってきたガンが独特の進化をしたものがネネです。ネーネーと鳴くので、それがハワイ語名の由来です。
元々は水鳥でしたが、岩稜地帯に生息するようになったので、水掻きが半分ぐらい退化してしまっていますし、産卵場所も普通のガンとは異なります。ハワイから太平洋を渡ることをしないので、翼はカナダガンに比べると16%ほど小さく、胸の筋肉も小さいです。よく歩くので、脚はカナダガンに比べると25%ほど太めです。歩きやすい姿勢になっているので、他のガンのようにお尻を左右に大きく振りません。多にも異なる点がいくつかありますが、水場があれば泳ぎますし、V字編隊飛行するなど、残している習性もあります。
交尾期・産卵期は8月から4月まですが、雛は1月から2月に生まれる場合が多いです。この時期は比較的降水量が多い時期なので、餌が多いわけです。夏には集団で見かけることが多いですが、産卵時期が近づいてくると、つがいで行動し始めます。
地面に巣を作るので、マングースに卵を狙われてしまうのです。マングースは、畑を荒らすネズミを駆除するために、人間が持ちこんだ動物ですが、マングースは昼間活動するのに対し、ネズミは夜間にしか活動しないので、役に立たないどころか、害になっています。
ネーネーは1?6個ぐらい卵を産みます。30日ほどで孵化しますが、その間、雌が卵を温め、雄は見張りをします。雌は毎日数回餌を探しに巣から離れます。1時間ほど巣から離れている間、卵が冷たくならないように、卵を羽で覆っておくようです。雄も雌と一緒に餌を求めて遠くにいってしまうこともあるようです。
幼鳥が飛べるようになるまで3?4ヶ月かかります。幼鳥は親鳥と次の産卵時期まで一緒に行動します。産卵時期が終わると、羽が抜け変わります。その間、飛ぶことができないので、マングースや野良猫に狙われやすくなります。
大抵、雄は生後1?2年後に、雌は生後2?3年後にパートナーを見つけます。つがいになると、大抵一生相手を変えません。
飼育されているネーネーは25年ぐらい生きますが、野生のネーネーはハワイ火山国立公園の話によると、同じぐらい生きる場合もありますが、大抵は10何年だけです。
ネーネーは草の葉や種や花、オーヘロ、クーカエネーネー、プーキアヴェ、ウーレイ、ポーポロなどの実を食べます。
餌不足で餓死してしまう幼鳥が多いこと(幼鳥はたんぱく質を多く含んだ餌が必要)、巣をつくり産卵しようとするつがいが少ないこと、限られた個体数の集団から人工的に繁殖させたために種の多様性に乏しいこと、車に撥ねられ死亡するケースが多いこと(餌をやらないこと、ネーネーが道を渡ってくることがあるような場所ではスピードを落すことなど、注意しなければなりません)、生息環境にマングースや野良猫や野犬や野ブタや野ヤギなどが入ってこないようにフェンスを作ってコントロールすることが大切ですが、広範囲に渡って行うことには限界があることなど、様々な問題点があります。
今後も長い年月をかけて努力しなければなりません。
追記:ネーネーを飼育して放鳥するプログラムは2011年に終了しました。ネーネーの個体数が2000羽近くになり、今後はフィールドでの管理に重視を置いてネーネーの保護を続けていくそうです。