自然観察旅行
山の自然研究会と鎌倉歩いてじょらん会:ハワイ自然観察旅行
<<古田 寛昭さんの紀行文です。>>
ハワイ四島巡りの中で最も核となる場所、火山とスバル天文台。今日は毎年約10 cm ずつ北東に動いていると云う天皇海山列発祥の地訪問。地球 Hot Spot のメッカ、ハワイ火山国立公園巡り。 Big Island の南東に広がる溶岩台地 Kilauea Iki (小)クレーター火口ハイキング。ナチュラリスト・ガイドの久美子さん、山の自然学のお手本のような解説。地質、地形、それにより織り成す植生、動物たちを、ものの見事に解説してくれる。
クレータ-の底に降り立つと、この地が 1959 年 11 月には、煮えたぎる溶岩で渦巻いていたとは信じられない位。平和な姿で我々を迎えてくれた。それでもまだ、所々に蒸気を揚げている噴出孔があり、大地が生きて活動していることをまざまざと見せ付けてくれた。キラウェア・イキは、1マイル( 1.6 キロ)、幅 3,000ft.(915m), 深さ 380ft.(116m) 。砂漠の様に見える溶岩台地を歩む人々が蟻のようにしか見えない。小クレーターと言いながら、そのサイズが伺われようというもの。
その他、 Halema’uma’u クレーター、ハワイ火山女神 Pele の棲家に詣でたのも心に残る印象であった。この場所で、金原さんが奉納凧揚げで女神を賞賛、前代未聞のイベント。
既に閉館していた Jaggar 博物館であったが、ハワイ火山展望台から Kilauea カルデラを一望。夕暮れ迫る中、久美子さんの熱弁に聞き惚れ、ここで形成された火山列が太平洋プレートに乗って、ハワイ- 天皇海底火山列を造り上げている。壮大なドラマを見る想いで感激に浸った。
*以下、米国内務省、国立公園局が編纂した Hawai’i Volcanoes National Park,Hawaii に素晴らしいコメントが載っていますので、抄訳します。
火山は地球創生の記念碑とも云うべきもので、原始時代の力がまだ生きていることを現している。火山の噴火を見ると、私達の住む惑星は常に変化する環境にあり、その基本的プロセスは到底人間の力に及ばないことを悟らされる。人間の勝手な都合で、地球表面を変えてきた人間であるが、噴火の力の前には、唯々、畏敬の念をもって立ち尽くすしかないだろう。
火山は又驚くべき土地造成者でもある。世界で最も活発な二つの活火山は、ハワイ島に土地を加え続けている。 MaunaLoa は、地球上で最も巨大な火山で、 19,000 立方マイルを占拠する。海底から計ると 56,000ft.(17,069m) で、エベレストより、 27,000ft.(8,230m) 高い。大陸の爆発性火山とは対照的に、流動性が高く、ガス爆発性が低い Kilauea と MaunaLoa の噴火は、炎の噴出と溶岩の川となる。これらの流れが、層を重ね、冷え固まり、殺風景な火山景観を生み出す。これが新しい生命の基盤となる。数百という植物、動物が壮大な太平洋を、風、海、鳥の羽に乗ってやってくる。その中で生き残り、適応できるものは僅かでしかない。そして隔離された時間の中で繁栄してきた。それから人間がやってきた。最初にポリネシアン、次いでヨーロッパ人。彼らが持ち込んだ植物、動物、外来種類が大きく進化の過程と壮大な自然セッティングを変えることとなった。
現在、ハワイ火山国立公園には、少なくとも7千万年に亘る期間の火山活動、移動、ハワイ諸島に成り立ち – 天皇海底山列チェーン -海底の裸の陸地から複雑な独特なエコシステムに覆われた過程、特異な人類文化を展示している。国立公園は、 Kilauea と、 Mauna Loa の自然環境を保護するために造られた。
公園はハワイ島原生種の植物と動物の避難所でもあり、それらを人間の過去の歴史とリンクしている。公園マネジャーたちは、資源の保全とビジターが公園を理解し、尊重することを促がすため働いている。
ハワイ火山観測所での科学者の調査は、 Kilauea を世界で火山情報最先端の観測所としている。ハワイ諸島の誕生と地球惑星のはじまりに光をあてている。
・火山は地球ダイナミズムの証左となるものだ。地球表面の岩石層が、より可塑的な下層マントルの上を緩やかに流れる。殆どの火山活動は二面の接線で起る。火山系として;ワシントン州の St.Helens, アラスカの Katamai, 日本の富士山、フィリッピンの Pinatubo 山が太平洋の “ring of fire” を縁取っている。
・太平洋プレートの真ん中にどうしてハワイ火山があるのか?
地下深くマントルのホットスポットからマグマが上がってくる。この流動性溶岩物質は、ガスの圧力で表面に押し上げられ、海洋面に噴出し、海山を造る。火山は引き続き成長し、ついに太平洋プレートが島を押し流して、ホットスポットから離脱する。
過去7千万年の間、太平洋プレートはコンベィアベルトの役割を果たし、島々をホットスポットから、年間約4インチ (10.12cm) のスピードで北西に動かしている。公園の活火山、 Kilauea と Mauna Loa は、 3,500(5,600km) マイルのハワイ島 -天皇海山チェーンを形成し、島造りのプロセスは未だ続いている。それでもそれが最後ではない : 南東に Lo’ihi 海山があり、潜水活火山で海床から聳えている。多くのつて火山が同じ道を辿るだろう。
新しい土地に生命がやってきた
・数百万年前、シダの胞子が東南アジアのとある場所から上昇気流に乗って 12,000m上空のジェット気流で東に流され運ばれた。そして最後に、胞子は太平洋の真ん中の不毛溶岩地に降り立った。これがハワイ諸島に生命がやって来た時の一つの方法だった。
・昆虫、種、そして蜘蛛たちもハワイ諸島に風に乗ったりしてやってきた。その他の方法もあった。渡り鳥、又は嵐に乗ってやってきた鳥たちは、種を消化器官又は、羽につけて飛んできた。太平洋海流は、塩に抵抗力のある種、筏に乗った昆虫、植物、浮遊が物に乗った蛇などを運んだ。両生類、爬虫類、淡水魚、殆どの哺乳類は壮大に広がる大洋を渡ることができず- モンクアザラシと白髪蝙蝠だけは成功した。数百万の動植物が航海を試みたが、成し遂げたものは少なく、遂げたとしても、生存し得たものは僅かであった。
・7千万年のスパンでみると、ハワイ諸島に移住できた動植物は、7万年に約一種ということができる。これらの種は時を経て、暫時変化し、島の生活により適応できるよう進化した。新しい土地では、捕食者や競合者も居らず、面倒な防御装置はいらなくなった。かって彼らを護るのに必要であった機能は必要でなくなり、結果において無くなってしまった。
・これらの新しい生命形態を逆説的な言葉で表現すると;棘のないイラクサ、ハッカの香りがしないハッカ、悪臭のしない悪臭昆虫、そして飛べない鳥など。
・ 90% 以上のハワイ原産植物と動物はハワイ特有種で、他には存在しない。島の 100 種の特有種は、 20 ばかりの祖先から派生;数千の花植物は 272 の移植者から派生; 1,000 種以上の軟体動物は少なくとも 22 種の移住者から派生;蜘蛛は 350-400 の先駆者から派生。驚くべき多様は性の生命が、かっては孤島であり、不毛の島であった処に生命の頑強さと進化の力の証左として繁茂している。
・ハワイ島では、素晴らしい日本人ネイチャーガイドに巡り会えた。歩きながら彼女の略歴を伺った。その名は;長谷川 久美子
生まれ : 1965年 3 月 24 日 兵庫県加古川市出身
幼い頃は、未だ自然が残されていた日本の田舎環境の中で育ち、多くの自然に触れ興味をもった。高校卒業後、 1983 年、オアフ島にあった関西外大ハワイ学舎に2年語学留学。後、米国ニュハンプシャー / フロリダ / 日本を往来。 1988 年、前夫とハワイに移住。ハワイの自然の魅力に執りつかれた。離婚、自然が癒しとなる。娘が三人。 21,15,13 才。
・久美子さんは、ネイチャーガイドとして、もう少し日本のことを知ってからでも遅くはなかったと回顧されていたが、独学でこの水準に達していることは驚きであった。山の自然学研究会の行動指針;常に疑問を抱き、地質が地形を形成し、動植物もそれらに規制されるという小泉自然学と全く同じ発想- 総合的に物を見るの精神が自然と備わっており、自分の目で確かめ、五感に訴える基本姿勢。常に何か新しいことを発見し、自分が感動したことを相手に伝えたいとのほとばしる熱意には動かされた。
・そして、必ずハワイの素晴らしい自然を護るにはとのメッセージで締めくくってくれた。山の自然学は、知的登山を提唱しているが、久美子さんは、「今までとは違った冒険心と知的好奇心に刺激を与える旅と体験」を提唱。ルーツが同じで嬉しくなりました。
・ 1995 年に発起した社名が 4u2c, Inc. とあり、戴いた名詞のメールアドレスにも 4u2c が記載されているので、これは意味があると直感。英語で発音して見ると; “For you to See”. 「貴方にご覧(判る / 理解 / 経験)して戴く会社の意味。素晴らしい感性だと思います。自分のしようとしている使命を具体的に見事に表現しております。
・より詳しくは、久美子さんの H.P. www.hawaii4u2c.com にアクセスを!