ハワイマガモ: マガモによる遺伝子汚染

昔ハワイ諸島には多種多様なカモ科(Anatidae)の鳥が生息していましたが、現在は3種しか残っていません。
Nene(Hawaiian Goose, Branta sandvicensis ハワイガン)
Laysan Duck(Anas laysanensis レイサンマガモ)
Koloa maoli (Hawaiian Duck, Anas wyvilliana ハワイマガモ)

この3種は全て絶滅危惧種です。
カモ科に限らず、ハワイの鳥たちの多くは、住む環境がなくなってしまったことや、鳥の病気や、人間が持ち込んだネコやマングースなどが原因で絶滅に直面しているのですが、ハワイマガモに関しては、以上の原因で個体数が減少しているだけでなく、人間がハワイに持ち込んだマガモ(Mallard, Anas platyrhynchos)との交雑によって種の存続が危ぶまれています。交雑による遺伝子汚染(Genetic Pollution)がおきていて、遺伝子絶滅(Genetic Extinction)の心配があります。
マガモは1800年の終わりごろ家畜として、そして庭園美化のためにハワイに持ち込まれ、人の手を離れて野生化したものが繁殖し、1950年代と1960年代には北米から何百羽というマガモが狩猟鳥として持ち込まれました。冬季には、北の国からハワイに渡ってくるマガモもいますが、その時期に来る固体は繁殖期の状態ではないので問題ではありません。
ハワイマガモは現在約2000羽いると思われていましたが、調べてみたところマガモとハワイマガモの交雑固体(ハイブリッド)が混ざっているそうです。
野生化したマガモ以外の、肉用種としてのPekin duckや、採卵用種としてのKhaki CampbellやIndian Runnersのような家畜のアヒルも注意しないといけないです。このような種がハワイマガモと交雑する可能性は低くても、このようなアヒルが鳥や人間の病気のウイルスの宿主となり感染を広める可能性があります。
ハワイでは、1980年代の終わりごろに、マガモの輸入が制限されるようになり、2002年には西ナイル熱の浸入を防ぐために鳥類の持ち込みが禁止されました。ですが、マガモの繁殖は続いていますし、マガモは今でも販売されています。
私達にできること:
マガモに餌を与えない。
マガモの輸入はしない、買わない、マガモの卵の売買はしない。
マガモを放鳥しない。
家畜のアヒルを飼っているなら、遠くにいかないように柵に入れたり、飛べないように翼の先端を切りとる。
野生化したマガモはハワイマガモ以外の鳥たちとも交雑しています。北半球では米国東部のAmerican Black DuckとMottled Duck。マガモは北半球原産の鳥ですが、南半球にも持ち込まれていて、南アフリカのAfrican Black DuckやYellow-billed Duck、アフリカ南東部のインド洋上の島国マダガスカルのMeller’s Duck、オーストラリアのAustralian Black、ニュージーランドのNew Zealand Grey Ducksとも混雑しているそうです。
USGS: Hawaiian Duck’s Future Threatened by Feral Mallards

2008-06-18 | Posted in 2 Comments » 

コメント2件

 Midori | 2008.06.19 21:06

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「遺伝子汚染」「遺伝子絶滅」・・・知りませんでした。外来種って、固有種の駆逐だけでなく、こんな深いレベルまで生態系に影響を与えるんですね。恐ろしい・・・
外来種が待ちこまれた当時は、きっと今ほど「生態系」という考えが無かったころなのでしょうか?家畜や環境美化という「良かれと思って」した行為が何十年もたった今、こうして絶滅危惧種を増やしているのですね。ひょっとしたら、今私たちがしていることの中にも、知らず知らずのうちに、未来に悪い影響を与えているものがあるのかも・・・
「自然は子孫からの借り物」というナバホ族の言葉がありますが、次の世代に、美しい遺産として手渡すのか、環境破壊という借金を背負わせるのか、責任重大ですね!
そのためのステップとして、Kumikoさんが提案してくださった「私たちにできること」、すごく参考になりました。ありがとうございました。

 Kumiko | 2008.06.20 1:47

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そうですよね。地球は先祖から相続したものではなくて、子孫から借りているものなのですよね。アメリカ先住民は上手く表現していますよね。

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