宝箱(お客様の声)
大自然のエネルギーシャワーで五感を満たすツアー
<<Hawaii Lifestyle ClubのHawaii Lifestyle Press 2013 Winter/No.01より黒川美智江さんのTour Report>>
2013年6月26日、ハワイ島ヒロ空港からその旅は始まった。自然と食をテーマにハワイ・ライフスタイル・クラブが企画した4泊5日の体験型ツアー。参加者は20~60代、そして全員が女性のおひとり様。旅は毎日、新鮮な驚きの連続だった。
自分の足下には地球があり、大地が呼吸をして、太陽がその地を照らしている。そうした当たり前のような自然のサイクルに、人間もまた組み込まれているのだと改めて感じたのは、ハワイ島のオヒア・レフアの森の中で呼吸をした瞬間だった。今回の「ハワイアン・サステイナブルライフを体験する旅」は、文字通りビッグアイランドの自然のエネルギーを体いっぱいに受け止められるものとなった。
旅の案内役は、ハワイ島に暮らし、自然のエネルギーに満ちたこの島の魅力を伝えてきたネイチャーガイドの長谷川久美子さん。ハワイ在住経験を活かし、ハワイアン・マクロビオテックという新しい食のスタイルを提供する、ベジタリアン料理家のヨシハラ・アンナさんの2人。
長谷川さんの精確な知識に基づく案内を受けながら、アカカの滝を歩き、今もなお水蒸気の噴出すキラウエアの溶岩台地を歩き、夜陰を赤く染めるハレマウマウ火口に目を見張る。マウナケアの満天の星空を眺め、オヒア・レフアの森林を木漏れ日の中、深索もした。そして、ファーマーズマーケットに並ぶ、この土地で育った採れたて素材を使ったアンナさんの手の込んだベジ料理。まさに貴重な体験の連続だった。
オヒア・レフアに勇気をもらう
ビッグアイランド東部を訪れると、リゾート開発が進んだオアフとは異なる豊かな自然に感動する。アカカの滝から見える森林を見て「これこそハワイの自然なんだ!」と、思わず記念写真を撮るかもしれない。けれど、この場所から見えている植物は、そのほとんどが元々ハワイにあった植物ではなく、移民が持ち込んだいわゆる外来種だ。モンステラやレッドジンジャー、バニヤンツリー、プルメリア・・・・。ハワイの植物として印象的なこれらは、元をたどればその昔、海を渡ってきたポリネシア人や西洋人が持ち込んだものだと聞くと、驚く人も少なくないではないだろうか。
ハワイ固有の植物にハワイ語で「ハプウ」と呼ばれるシダ植物がある。アカカの滝でも見られるが、外部から持ち込まれた太い幹の力強いシダと比べると、ややおとなしい印象だ。ハワイ固有種の多くは、華やかな外来植物に比べ、少し地味で目立ちにくい傾向がある。他の植物と生存競争をする必要がなかったからだそうだ。
太平洋の真ん中にぽつんと浮かぶハワイ諸島には、海流や鳥、風に運ばれる以外に自然の力で種子がたどり着く事が困難なため、独自の生態系が形成されてきたのだ。
ハワイ島の花として赤く鮮やかに咲くオヒア・レフアは固有種の代表だ。小さな種子を飛ばし、風と共にやってきて、風と共に次なる場所へ飛んでいく、土の無い乾燥した大地にも根付く彼らは、パイオニア(開拓者)植物と呼ばれているが、黒々とした溶岩の割れ目から、力強く芽を出すその姿は確かに、見る人に前へ進む希望と勇気を与えてくれるように見えた。
食べ物を味や栄養だけで語るなかれ
アンナさんは、「エネルギーの高いものを食べてもらいたい」という独自の哲学から、新鮮な食材を使ったマクロビオティックやローフードの研究を続けているが、さらに人が食物をとる行為は、いわゆる「体・精神・魂」という考えと似ているとも言う。つまり、「体」は食事でいう「味」、「精神」は「栄養素」、「魂」は「食材そのものの素質」という意味だ。味はわかりやすく、栄養素は体を形作るが、食材は栄養素だけでできている訳ではなく、より重要なのが「魂」、つまり「食材がもつ素質」だということである。
例えば、ポリネシアンの人々は、子どもに「魚の目を食べなさい」と教えるそうだ。果てしない大海をゆく魚のように、「遠くが見えるようになる」からだという。つまり、「食材が持つ素質」というのは、この「魚の目」のように、食材に予め備わっている「エネルギー」のことを意味する。豊かな日光を浴びて育ったフルーツや、肥沃な土の中で力を蓄えた野菜が内側に持つエネルギーというのは、決して栄養面だけで語れるものではないと話す。考えてみれば、台所の片隅に放っておいても、彼らはやがて芽を出す「生命力」を既にその身に持っているわけだから。
ツアーの食事は、基本的にアンナさんが用意してくれたもので、毎朝ファーマーズマーケットで仕入れた旬の食材からなるベジ料理。新鮮なリリコイや南国フルーツのスムージー、ココナツの実の刺身風、タロイモを使った伝統料理のポイパウンド、スプラウトサラダなどなど、この地ならではの一品が食卓を彩った。
人間の心身は、食べるものによって作られている。口から身体へ、考え方へ、そして魂(スピリット)へとつながる。ビッグアイランドの食材を使ってアンナさんの作る料理から、そんなことまで教わった。
今回の旅で体験したことのひとつは、物事を「知る」ということの大切さ。実際にハワイに足を運び、その地の歴史や文化を知り、自然環境を知り、人々の生活を知り、考え方を知る。ご存知の通り、ハワイには実に多面的な魅力があってその楽しみ方も全く人それぞれだが、こんな深みのある時間の過ごし方もあるということがわかり、自分の中のハワイイメージも大きく変わった気がした。