宝箱(お客様の声), 自然観察旅行

生態学の教材が豊富なハワイ(草野河畔林トラスト財団派遣)

<<北海道 酪農学園大学 宮木雅美教授からのお便り>>

長谷川久美子様

この度は、子供達にわかりやすく、情熱的に、たくさんのことを教えていただきたいへんありがとうございました。子供たちは、楽しい思い出とともに、自然の面白さを記憶にとどめてくれたと思います。

私も、溶岩上や森林の植生を、おもしろく観察することができました。特に、コアの葉の形態が、なぜ成長につれて大きく変わるのかに興味を持ちました。日本の樹木の生態をもとに次のように考えたのですが、いかがでしょうか。

若い木に見られる、葉が小さく細かく分かれた葉は、遷移初期種(陽樹)の生育と関係しています。細かく分かれた複葉は、空気の流動を活発にし、二酸化炭素を取り込みやすくします。また、薄い葉は、光合成の効率を高めます。コストをかけずに、薄い”安物の”葉を作ることによって、個々の葉の寿命は短いが、効率の良い葉となります。多種の木よりも早く成長することによって、その場を占有することができるわけです。

一方、大きく成長した木の葉は、遷移後期種(陰樹)の生育と関係しています。強い日射や乾燥に耐え、虫の摂食などにも強い丈夫な葉(葉柄が発達した偽葉)は、光合成の効率は悪いが、寿命の長い葉となります。また、強い光の下で、葉の傾きを変え、下方まで光を到達させることによって、木全体の光合成能力を高めていると考えられます。

日本では、森林の発達は、シラカンバのような明るい場所を好む木がまず林を作り、その中でブナやミズナラのような日陰に強い木が育って極相林を作ります。ハワイでは、ただ1種の植物が、葉の形態を変えることによって、遷移の初期から後期までの生活を完結させ、生育地を乾燥地から湿潤地まで広い範囲に拡大させたことは、実に驚くべきことですね。ハワイはこのような生態学の教材が豊富にあると感じました。

自然をただ解説するだけでなく、情熱をもってわかりやすくお話しされる久美子さんの役割は、大きいと思います。大変ハードなお仕事ですが、健康に留意され、これからも益々のご活躍されますようお祈りいたします。

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