植物

ハワイ島マウナ・ケア山のギンケンソウ(シルバーソード)について

アーヒナヒナハワイ島マウナ・ケア(標高4205m)のギンケンソウ(Argyroxiphium sandwicense ssp. sandwicense)はキク科(Astranceae)のMadiinae亜連のハワイ固有植物で、元来、標高2600mから3800mの乾燥した高地に生息する高山植物です。
名前は葉の色や形が由来で、属名Argyroxiphium(アルギロクシフィウム)はギリシャ語の銀を意味するargyrosと、剣を意味するxiphosが語源です。英語ではSiversword(銀の剣を意味するシルバーソード)、ハワイ語名ではAhinahina(灰色を意味するアーヒナヒナ)です。
ハワイ島マウナ・ケアのギンケンソウとマウイ島ハレアカラーのギンケンソウ(Argyroxiphium sandwicense ssp. macrocephalumは亜種のレベルで異なります。
開花期は夏です。発芽後開花するまで5年から50年までの歳月を要します。1つの固体がヒマワリを小さくしたような花を最大で500個ぐらい咲かせます。花は花茎の下の方から順々に開き、約3?4週間咲いています。自家不和合性 (self incompatibility、同じ花の花粉が柱頭についても、花粉管の発芽、伸張、受精が生理的に妨げられる仕組み)で、同じ年にその他の固体が花を咲かせていないと子孫を残せません。いったん開花、結実すると株全体が枯れて一生を終える一巡植物(monocarpic)です。でも、この写真の固体のように複数に枝分かれする性質のものもあり、その場合は花を咲かせた部分だけが枯れて、主軸とそこから出たそのたの枝はそのまま残ります。マウナ・ケアでは種から栽培されたものに、この遺伝子を持っているものが多いようです。
ギンケンソウの祖先にあたる植物は、地中海性気候帯で植物固有種が多いカリフォルニア植物相地域(California Floristic Province)のキク科植物Tarweedのある種で、その種子がハワイに到達して、標高が高い乾燥地帯や湿地帯など様々な環境に合わせて、多様な進化を遂げました。 ギンケンソウ属(Argyroxiphium)の5種と、その類似種であるドゥバウティア属(Dubautia)の23種と、ウィルケシア属(Wilkesia)の2種は、単一の先祖が多様なニッチに適応していった適応放散(adaptive radiation)の注目すべきすばらしい例です。
1986年3月21日に米国内務省・魚類野生動物局(US Fish and Wildlife Service)の絶滅危惧種リストに加わりました。現在、野生の個体は36ぐらいしか残っていません。絶滅寸前となってしまった主な原因は、野ヤギや野ヒツジです。人間がハワイに持ち込んだ草食動物に食べられてしまったのです。
これまでに採集した種から繁殖させた固体を3000以上植えて、絶滅しないように努力しています。2005年には9年ぶりに野生の個体が花を咲かせ、保護増殖のため、その固体から10万個以上の種を集めることができたそうです。
しかし、本来ギンケンソウの生息地であるはずの場所は、ハワイ州政府の管轄下ですが、野ヤギや野ヒツジがいますし、マレイン(Verbascum thapsus、和名:ビロウドモウズイカ)という帰化植物が広範囲に繁殖しているので、マウイ島ハレアカラー国立公園のような徹底した努力(フェンスを張ったり、帰化植物をコントロールすることなど)が必要です。

2006-07-18 | Posted in 植物No Comments » 
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