自然保護
ハワイのコウモリ「オーペアペア」
私は夕暮れ時に田舎道をドライブしているときや、夕暮れ時に家の近所を散歩しているときに、楽しみにしていることがあります。それはコウモリです。
今年の夏、現在オーペアペアの実態を調査しているUSGS Pacific Island EcosystemsのResearch BiologistであるDr. Frank J. Bonaccorsoのレクチャーを受けました。
ハワイに生息するコウモリはハワイ語でオーペアペア( ʻŌpeʻapeʻa )と呼びます。オーペアペアはヒナコウモリ科(Vespertilionidae)ヒナコウモリ亜科(Vespertilionidae)のシモフリアカコウモリ属のコウモリ(Lasiurus cinereus, hoary bat)の亜種です。 英語ではHawaiian hoary bat(直訳すれば、ハワイアンシモフリアカコウモリとなるかな)、学名はLasiurus cinereus semotusです。
オーペアペアが、いつごろハワイ諸島に渡ってきたのかは不明だそうですが、ポリネシア人の渡来よりも前に、北アメリカ大陸から渡ってきたようです。 貿易風と共に飛んでくる場合には2日半ぐらいかかるそうです。
シモフリアカコウモリには3種の亜種が存在するそうで、オーペアペアは亜種のレベルでハワイ固有種であり、絶滅危惧種です。他の2種は北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカに渡る広範囲に生息しています。オーペアペアは他の2種よりも小さな種で、体重は14~18グラム(0.49~0.63オンス)、腕を広げると10.5~13.5インチ(26.6~34.3センチ)で、メスのほうがオスよりも大きいです。メスの毛は赤みを帯びた色かこげ茶で、オスは灰色や白っぽい色をしているそうです。入念に毛づくろいをして毛を清潔に保つそうです。
オーペアペアは群を作らず、昼間は単独で森の中の気に入った樹木にぶら下がって寝ています。日が沈むと食べ物を求めて単独で行動し始めます。不規則で、ふらふらとした感じで、ジグザグに、または円を描くように飛ぶので、ぱっと見てオーペアペアだと判ります。
オーペアペアは自分の縄張りの領域で、飛んでいる夜行性の虫(主に大き目の蛾や甲虫ですが、蚊やシロアリ)を超音波で探します。一晩のうちに、自分の体重の計40%に比重するだけの獲物を食べることもあり、獲物を求めて一晩のうちに、12マイルも離れたところまで飛んでいくこともあるそうです。夕暮れ時や、月夜や、夜明けごろに、森の外れや、池の上や、ビーチなどで観かけることが多いです。
原生の森にも、外来種の植物が多い場所にも生息していて、餌場は山側から海側にかけて広範囲です。一晩のうちに、電波のトランスミッターを利用して調べてみたところ、標高102~3280フィートまで移動した固体も記録されています。
哺乳類の小動物なので温度変化に敏感で、急な斜面を持つ渓谷のように(たとえばハワイ島のワイピオ渓谷)高いところに、または低いところに移動して温度調節ができるところを好むそうです。
5~9月が交尾の季節で、妊娠期間は約80日。1~2匹の子供を生み、約6週間母乳で育てます。子供は生後4週間ぐらいは自分で飛べませんから、お母さんは子供を宿り木にとまらせておいて、餌を探しに行きます。もし、その宿り木が安全な場所でなくなると、お母さんは子供を別の木に移動させようとして失敗してしまうことがあるので危険です。子供を自分の体にとまらせて飛ぶというのは難しいからです。
オーペアペアの鳴き声のピッチを25-40 KHZから1-2 KHZに落とす(同時に波長が長めになる)と、こんな声に聞こえます。 (カウアイ島のDavid Kuhnのレコーディングです。SoundsHawaiiのウェブページ)
オーペアペアの写真(Honolulu Zoo)
2012年6月14日追記:またDr. Frank J. Bonaccorsoの話を聞いてきました。オーペアペアにとっての問題は、森林の伐採、火事、外来種の生き物の増加(スズメバチやコキコヤスガエルなど)、有刺鉄線の柵などです。また風力タービンが弱い風が吹いているときに回っていると、その周りの空気圧が変わって、その近くにきたオーペアペアの肺が爆発してしまうそうです。