火山
2009年6月4日午後7時のハレマウマウ火口
キーラウエア山頂部のハレマウマウ火口の底部から屋ウ100メートル下に見える真っ赤な溶岩です。溶岩が波立っているようす、跳ね上がっている様子、泡立っている様子、上昇してきている様子がわかります。
キーラウエア火山のシャッター・リング
この写真は、2006年2月に友達と赤い溶岩が見えるところまで歩いて行く途中で立ち寄ったシャッター・リング(Shatter Ring)と呼ばれる砕けた溶岩でできた円形の壁のような構造です。高さは1.5?2メートルで、直径30メートルほどの大きさだったと思います。
シャッター・リングは、活動している溶岩トンネルの上部にできるもので、何らかの原因で溶岩トンネルの天井が内側からの連続的な圧力と熱に耐え切れず破壊され押し上げられてできます。最後には内側が陥没して、外側だけが盛り上がった状態で残り、円形の縁取りのような形状ができます。(shatterとはガラスなどが粉々に割れることで、ringは輪です。)
左のUSGSのビデオは、シャッター・リングの形成の様子で、溶岩が流出しているのがわかります。(撮影日時:2006年10月16日午前6時20分ごろから約2時間20分)
このシャッター・リングのサイズは、直径55メートル、高さ2.5メートル。内側はシャッター・リングの外側の溶岩台地よりも1メートル低かったそうです。形成中、中心部は5メートルぐらい盛り上がったそうです。
Limu O Pele
リム・オ・ペレ(limu o pele)
溶岩が海に流れ込む時に、液体の溶岩の上に波がかかったときに、溶岩に巻き込まれた海水が沸騰し、溶岩が蒸気によって泡立ちます。泡が膨張して、その表面の薄い溶岩は固まり砕けます。その欠片がリム・オ・ペレ(limu o pele)です。
ハワイ語で溶岩流のことも、火山のことも、噴火のこともペレ(pele)のこともペレと呼びます。火山活動は時には激しく、森や村も飲み込み、時には美しい光景を見せてくれます。火山の営みと神秘を擬人化すると、時にはとても魅力的な美しい女性、時には嫉妬深い女性、時には怒った女性、時には若く活気に満ちた女性、時には年老いた女性にも譬えられます。ですが、その力は偉大で、人間などはちっぽけな存在です。神秘的です。女神と譬えるにふさわしい存在です。火山の女神、それはペレです。
リムはハワイ語で海草のことです。この溶岩の欠片は一見海草に似ています。リム・オ・ペレ。ペレの海草・・・この薄い溶岩の欠片にぴったりな名前です。
フアラーライ山
この写真は早朝のフアラーライ。この山は・・・、いえ、この火山は、ハワイ島で3番目に若い火山であり、3番目に活発な活火山です。(1:キーラウエア、2:マウナ・ロア)
1800年と1801年の噴火が一番最近の噴火です。その時に流出した溶岩は海に流れ込みました。現在のケアホレ空港(コナ空港)は、1801年の溶岩流の上に建設されたものです。
山頂の標高は約2521メートル。ハワイ島で3番目に高い山です。(1:マウナ・ケア4205m、2:マウナ・ロア約4170m)
マウナ・ケアとマウナ・ロアは、山頂部に毎年雪が積もりますが、フアラーライにも雪が積もったことがあります。1862年、1892年、1897年、1898年、1936年、1955年は、これら3つの山に雪が積もったそうです。
環境にやさしい地熱発電
ハワイ島プナ地区カポホは、キーラウエア火山の東側の裾にあります。ヒロから約21マイル(約33キロ)南です。この辺りは、キーラウエア山頂直下のマグマ溜まりから東側に向ってマグマが地下を移動する地盤の弱い地帯・リフトゾーン(Rift Zone)に位置するため、噴石丘や溶岩流があちこちに見られます。有史以前のものから、新しいものでは1960年のものまであります。1960年の噴火ではカポホ村全体が埋め尽くされてしまいました。
カポホには、Puna Geothermal Venture (PGV)と名の地熱発電所があります。1960年代から地熱発電1993年に電力生産が開始したこの地熱発電所は、2008年に15周年を迎えました。
Watch the PGV 15th Anniversary Celebration. Listen to Lt. Governor Aiona.
1881年にカラーカウア王はニューヨークのトーマス・エディソンを訪れて、ハワイの火山のエネルギーを利用することについて話し合ったそうです。当時は実現されませんでしたが、1960年代にハワイにおける地熱発電が注目され始め、1976にハワイで初めて地熱井が掘られました。現在約30メガワットの再生可能エネルギーがハワイ島の電力会社(Hawaii Electric Light Comany)に供給されています。これはハワイ島での需要の約20%です。
燃焼させることにより二酸化炭素を発生させる化石燃料を使わず、二酸化炭素の排出量が少ない地熱発電は、地球環境にやさしい発電です。
余談: カポホの下には今でもマグマが溜まっているところがあります。2005年に8300フィート{約2.5キロメートル)の深さの地熱井に、下から20フィート(約6メートル)マグマが上昇してきたそうです。ハワイの溶岩は玄武岩溶岩ですが、地熱井の中に入ってきたものは二酸化珪素を多く含んだ石英安山岩(dacite)だったそうです。
Star Bulletin December 22, 2008
2009年3月25日のキーラウエア火山・ハレマウマウ火口
2009年3月25日は、キーラウエア火山山頂部のハレマウマウ火口の白い噴煙が、何度も茶色くなりました。上の写真は午後12時過ぎの様子です。下のビデオは午前11時3分にUSGSによって撮像されたビデオです。
赤いもの
これは、2009年2月26日の、火山ガスの向こうに沈んでいく真っ赤な夕日です。足元は真っ黒な溶岩、その先には、溶岩で覆われずに残ったジャングルのような土地。
溶岩トンネルの中を流れ、海に注ぎ込む赤熱の溶岩が作り出す、大きな水蒸気柱。24日に溶岩の流れがピタッと止まってしまったのに、25日の夜7時ごろに復活したそうです。
2008年3月以来ほぼ継続的に、このスポットに流れ込んでいます。海への流入口(ocean entry)の辺りには、海岸線に扇形に広がった新しい土地、溶岩デルタ(lava delta)があります。海岸線と並行の亀裂ができているそうで、海に崩れ落ちる可能性があるそうです。風が強くて、水蒸気柱はずいぶん倒れていました。上空からの写真
ハワイ語で「赤」はウラウラ(‘Ula’ula)。火山ガスの影響で一層赤い夕日、熱く輝く溶岩で照らしつけられ赤く見える水蒸気。暗くなった空を見上げると、ほぼ真上にプレイアデス星団「すばる」が見え、その近くには赤い星、アルデバラン。アルデバランはハワイ語でホークーウラ(Hoku’ula)、意味は赤い星。
ハレマウマウ火口 (2009年2月7日)
2008年の3月から噴煙を出しているハレマウマウ火口の噴気孔の中です。ガスが沢山出てきていて、内部は見えにくいのですが、赤外線ビデオで見ると、噴気功の縁から約3ヤード(約2.75メートル)下に熱く赤い溶岩がはっきりと見えます。
このUSGS(米国地質調査局)のビデオを観ると、マグマ溜まりから上昇してきた溶岩のレベルが上がったり下がったりする様子がわかります。キーラウエア火山のマグマ溜まりの上部は、山頂部表面の3キロメートルぐらい下にあると言われていますが、ガスが溜まってくると、時々脱ガスを起こし、それとともに、上昇してきた溶岩のレベルが上がったり下がったりするという説が強いそうです。
巨人の足?
まるで巨人の足のように見えるこの形・・・ 奥の方に人が立っているのが見えますか。これは溶岩トンネル(lava tube)の中です。粘性が低く流動性に富んだ溶岩流の表面が固まり、その下を、溶岩が保温された状態で流動性を保ち流れていきます。地下にできる溶岩の通り道です。そのような溶岩トンネルは、長い間流れ続けると、下を溶かしていきますから、どんどん深くなっていきます。
ハワイには、このような溶岩トンネルが沢山あります。溶岩トンネルの中は、それぞれ個性的で、色んな造形があります。
真っ赤な太陽
2008年11月21日の夕方、ハワイ火山国立公園から東に向かってドライブし始めると、車のサイドミラーに真っ赤な太陽が見えました。車を道の脇に停めて写真を撮りました。
この日は風が弱く、キーラウエア火山山頂部のハレマウマウ火口から出ている二酸化硫黄を多く含んだ噴煙が山頂の西側半分に充満していました。 この日、太陽がこんなに真っ赤に見えたのは火山性スモッグ「ヴォッグ」が漂っていたからです。
噴煙中の大量の火山ガス(volcanic gases) に含まれている二酸化硫黄(sulfur dioxide、亜硫酸ガスとも呼ぶ)や硫化水素(hydrogen sulfide)など硫黄を含むガスが上空を漂ううちに、太陽光(sunlight)と大気中の水分や酸素や塵(atmospheric moisture, oxygen, dust)と化学反応をおこして(interact chemically)、エアロゾル粒子(aerosol particles)ができます。この化学反応は数分間のうちに、または数日間のうちに起きるのだそうで、火山ガスと硫酸エアロゾルで霞がかかったような靄(haze)が見えますが、それを火山性スモッグ(volcanic smog)のことをヴォッグ(vog) と呼びます。酸性雨も降らせます。ヴォッグに含まれているエアロゾル(aerosol)は主に硫酸sulfuric acidとその他の硫黄化合物(other sulfate compounds)でできているそうですが、キーラウエア火山のヴォッグにはセレン(selenium)、水銀(mercury)、ヒ素(arsenic)、イリジウム(iridium)など有害な金属も少量ですが含まれているそうです。
硫酸エアロゾルはとても小さく、火山灰とは異なり、なかなか地上へと落ちてこないそうです。日射によって対流が生じる対流圏は上空十数キロメートルで、対流圏内であれば、硫酸エアロゾルは雨に溶け込んで大気中から取り除かれやすいそうです。でも大噴火の場合は噴煙が対流圏(troposphere)を超えて成層圏(stratosphere)まで達し、塩酸エアロゾルが数年間も地球を覆うこともあり、硫酸エアロゾルが太陽光を反射することにより、地表に降り注ぐ太陽エネルギーが減少し、地球が寒冷化するそうです。また硫酸エアロゾルが、大気を保温する働きをもっているオゾンを破壊することにより、寒冷化がひどくなるそうです。このような現象を「火山の冬」と呼ぶそうです。