自然保護

野ブタによる害

hapuu

野ブタ(Feral pigs, Sus scrofa)はもともとハワイにいた動物ではなく、西洋人が狩猟を目的として持ち込んだユーラシア原産のセイヨウイノシシです。(ポリネシア人が持ち込んだブタは小型のもので、もともとは東南アジアからのアジアイノシシものと言われています。家畜として飼われていましたが、野生化したものもいたとでしょう。)近年野ブタの数は増加する一方で、大きな問題になっています。
野ブタは森林の中に住んでいます。餌探しのために地面を掘り起こし、植生を荒らしてしまいます。西洋人が農業のために持ち込んだミミズ、湿潤な森林に生えるハープウ(ハワイ固有木生シダの一種)の硬い木質の幹の中のデンプンを好んで食べます。野ブタがハープウを押し倒して中を食べてしまうと、上の写真のように、食害を受けたハープウの木化した幹が細長い器のように残って雨水が溜まります。
蚊が住んでいる標高の低いところで、そのような水溜りができると、蚊が増える原因となります。外来の鳥たちが持ち込んだ鳥のマラリアを蚊が媒介します。鳥のマラリアに抵抗力がないハワイ固有の鳥たちは、蚊がいる環境には棲めません。
hapuu 2野ブタは外来種の植物であり繁殖力が旺盛なストロベリー・グアヴァ(Psidium cattleianum)も好物で、この植物の種を運びます。外来の雑草の種も運びます。原生林の中で在来植物を食べてしまうだけでなく、原生林に外来植物が侵入する手助けをしてしまいます。外来植物が増えると、在来植物が益々減少し、在来の虫や鳥たちにとって棲みにくい環境になってしまいます。
ハープウはタカワラビ科タカワラビ属のシダです。何種類かのハープウがありますが、この写真のように茶色い綿毛が生えたシダはその一種のハープウ・プル(Hapu’u Pulu, Cibotium glaucum) です。綿毛は新芽を保護しています。hapuu 1
とても大きな木生シダで、6メートルぐらいの高さまで成長します。湿潤な森のオーヒア・レフアの程よい木陰に生えているハープウは大変美しいです。
野ブタの食害を防止するために森林にフェンスを張り巡らせますが、そのように保護されていれる森林は現在ほんのわずかにしかありません。
本来あるべき湿潤な自然林の姿と野ブタの食害を受けた場所の写真

2008-06-02 | Posted in 自然保護6 Comments » 

コメント6件

 まゆみ | 2008.06.04 20:16

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こんにちは(^^) いつもありがとうございます。
イノシシの被害、深刻なようですね・・・
動物だってみんな生きるのに必死だろうから
イノシシに罪はないのだとは思いますが
本来の自然のもとで育っていた植物や生き物が追いやられていくのも悲しいことですね。
私も野菜の栽培を始めて、やってくる虫たちの存在が気になるんですが
美味しいものに有り付いている、そんな虫さえ退治するのが可哀想になってきた私です。
かと言って放置しておくと野菜が育たなくなりますし(^^;)
あっちの草の方に行ってねぇ・・・なんて追っ払っても、やっぱり好きなものは好きなんでしょうね。
人間の身勝手なのかと、ちょっと考えこんでしまう今日この頃なんですが・・・

 Midori | 2008.06.05 0:04

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「イノシシがハブウにダメージを与える」だけでは事が済まないんですね!その先も・・・
日本でも毎日のように環境問題に関するニュースやテレビ番組があります。一番多いトピックは温暖化現象です(最近ではこれに食糧危機問題も加わりました)ハワイやアメリカではどうですか?
温暖化現象でよく引き合いに出されるのは、最大海抜5メートルというオセアニアのツバル諸島です。温暖化⇒海面上昇⇒海岸線の侵食や塩害で、主食のヤシやタロイモが採れず⇒自給自足の生活から、お金でモノを買う生活へ(買い物によって、今までには無かった、たくさんの生活ゴミが発生)⇒現金収入を得るために出稼ぎに⇒都会でエイズに感染する若者も・・・という、これもまた悲しい負の連鎖です。ツバルのように、それまで自然に負荷をかけずに生活してきた人たちに、真っ先に環境破壊のツケが回ってくるというのも理不尽なように思います。
今のところ、本やネットでの頭でっかちな知識しかないのですが、実際のフィールドワークを通してのKumikoさんのレポは、やっぱり説得力がありますね、凄い!Kumikoさんのツアーにいつか必ず参加させていただきますので、その時は壊されていく自然の姿も是非レクチャーお願いします。

 Kumiko | 2008.06.05 1:20

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はい、イノシシの被害は、かなり深刻なんです。本来あるべき森の姿を知って、そこの植物たちと肌で接していると、保護されていなくてイノシシの食害を受けているところにいくと、そのあまりにも無残な状態に心が痛みます。
まゆみさんがおっしゃるように、イノシシは悪気があってやっているのではなく、生きていくために食べているのですよね。悪者扱いされているのは可哀想でもありますよね。あ~、ハワイにイノシシを故意に持ち込んだ人たち、結果を予測して考え直してくれてたらよかったのですがねえ。
殺すのはかわいそうだから、やっぱりフェンスを張り巡らして森を守るのが一番でしょうねえ。殺すなら食べるために狩猟してくれるハンターにお任せと言ったところでしょうか。

 Kumiko | 2008.06.05 1:48

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ハワイは温暖化現象による影響は、他の諸国に比べると少ないようですね。
みどりさんのコメントにある、オセアニアのツバル諸島の温暖化から始まる悲しい負の連鎖について読んで、ハワイのことと二重写しになりました。
温暖化は関連していないのですが、西洋人たちが、ハワイでサトウキビを大量に生産し始めたころ、用水路を造って水をサトウキビ畑へと運んだために、もともと清い水が十分に流れていて先住民たちがタロイモを栽培していたところに水が流れなくなり、タロイモ栽培ができなくなったというところが多いこと。
もともと水が少なめの地方では、山側が牧場となり木々がなくなってしまい潤いがなくなると、村では水不足となり住める環境ではなくなってしまったというところもあります。
私は、ハワイのことに関しては実際のフィールドワークを通して知ることができますが、その他のところ
についてとなると、みどりさんとと同じで本やネットで情報を得ています。いつかハワイ島でお会いしたいですね。その日を楽しみにしています。

 Lilikoi | 2008.06.05 7:45

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先日、世界的に予言されてるブラジル人!が
広島に来られ、私は仕事で行っていませんが、聞いた話です!鳥インフルエンザが大流行する、大地震が起きる・・・などなど、
日にちまで聞いたものもあります(*_*;
温暖化や食糧難など、まじかで起きている問題と掛け合わせて世界中で人が進化していくと同時にガラガラ何かが崩れていってるのを感じますよね!
息子が電気・水道などのパイプラインのないマレーシアの奥地に勉強に行きました。
交通手段は川を船で上るしかないところで、親として、行ってしっかり学んで欲しいですが、衛生面や・・・そこもあれから3年車でいけるよう開発されだしたそうです、少し悲しいそうです!日本は恵まれすぎて、実感できない子ども達(大人も!)が多く、何でもお金で解決できると思っているように思いますが、違う!一人ひとりの意識が大事なことに早く気付くべきなのですよね!
あ~長々とすみません!ちょっと興奮!
久美子さんと話せるのを楽しみにトレーニング頑張ります♪

 Kumiko | 2008.06.05 12:36

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電気・水道などのパイプラインのないマレーシアの奥地ですか。息子さんは、あまりにも便利な日本からかけ離れたところに行かれたのですね。
私もハワイ島の電気もない水道もないというところに住んでいたことがあります。でも住み始めてから数年後に電気がきました。道は舗装されていない凸凹道で、雨がふると道の端から端まで池のような水溜りができていました。これが我が家の娘達が育った環境です。
息子さんがいらっしゃるところに比べると、そんなにも奥地ではないのですが、開発されだすと、少し悲しくなるという気持ちわかります。
Lilikoiさんとの再会を楽しみにしています!

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