オナガミズナギドリについて

Wedge-tailed shearwater

オナガミズナギドリ(Puffinus pacificus)は全長39cm、翼を広げると97cmぐらいの中形の海鳥で、海面近くの魚やイカを食べます。小さな魚やイカが大きな魚(マグロ)に追われ、海面近くに上がってくると、その周辺にオナガミズナキドリの大群が集まってくることがあります。尾がくさび(wedge)形をしていて、海面を鋏で切る(shear)ように餌をとるので、英名はWedge-tailed shearwaterです。 ハワイ語ではウアウ・カニ(uau kani)と呼びます。

淡色型と暗色型があます。淡色型は額から頭上、体の上面、翼の上面が一様に黒褐色。体の下面は白。翼の下面もだいたい白で、縁は褐色。嘴は淡紅灰色で先が黒。足は淡紅色。暗色型は、体も翼も上面は黒褐色で、下面は濃灰色。 喉と胸の上部が薄灰色。嘴は灰色、足は淡紅色。
繁殖期以外は大洋で生活し、島で集団繁殖します。 4?5月に土中に穴を掘って、6月に白い卵をひとつだけ産みます。雄と雌が10日おきぐらいに交代で卵を温めます。卵を温めていない親鳥が海に餌(小さな魚やイカ)をとりに行きます。親鳥が餌をとりに行くのは日中で、夜は巣に戻ります。52日ぐらいで雛が卵からかえり、100?105日後に巣立ちます。 11月になると赤道反流に沿って南米の海岸へ渡って行き、3月になるとハワイに戻ってきます。
世界中に50?60種類のミズナギドリが生息していますが、ハワイでは2?3種しか見かけません。ハワイでよく見かける種はオナガミズナギドリで、淡色型のものが多いです。(日本では、淡色型のものが小笠原諸島や硫黄島で繁殖します。) ハワイでは27万羽ぐらい生息していますが、北西ハワイ諸島に集中しています。
地面に巣を作るため、犬や猫やマングースやネズミに狙われてしまいます。オアフ島のKaena Point Natural Area Reserveで、100羽以上の雛が、4?5匹の犬に殺されてしまったということが、11月6日(月)にわかりました。 同保護区では、1996年に1匹の野良犬により1晩で40羽、2005年には1匹の野良犬により20羽ぐらい殺されてしまったようです。
このような動物による被害を抑え、外来の植物の伐採やゴミの削除も行って、ilimaやnaupakaなど本来あるべきハワイの植物を植えて繁殖地を改善する必要があります。

2006-11-10 | Posted in No Comments » 

 

アララー(ハワイガラス)について

Alalaハワイガラス(Corvus hawaiiensis)はハワイ語ではアララー(`Alalā)と呼びます。 1992年には個体数が12羽になり、最後まで残っていたつがいも、とうとう2002年にいなくなってしまい、野生絶滅種となってしまいました。野生絶滅種とは野生では絶滅し、飼育下だけに生き残っている種のことです。
大きさは48-50センチで、ハシボソカラスよりも嘴が太めです。木の実(アーカラ、アイエア、ホーアヴァ、イエイエカナヴァオマーマキ、マノノ、オハ・ケパウ、オーヘロ、オーラパ)、昆虫、森に住む鳥の卵や雛、花の蜜、花、腐肉などを食べます。
ハワイ島のフアラーライ山と、マウナ・ロア山の西側から南東部の標高300-2500メートルにある比較的乾燥したオーヒアとコアの森に住んでいましたが、減少した原因は、環境が破壊されてしまったこと、外来種の鳥が持ち込んだ鳥の病気を蚊によってうつされるようになったこと(他の鳥たちも同じ理由で1890-1910年に著しく減少しました)、人間が持ち込んだマングースや野良猫やネズミに捕食されてしまうこと、野良猫の糞からトキソプラズマ症に感染してしまうことです。また1890-1930年の間には、農夫たちに撃ち殺されていたようです。1931年より保護されるようになりましたが、それでも1980年代まで、このようなことが続いていたようです。
1973年から個体数を増やすための努力を開始しましたが、結局は野生絶滅してしまいました。飼育施設から野生に戻しても、病気にかかってしまったり、イオ(ハワイノスリ)に捕食されてしまったりしたのです。
問題はアララーに適した環境が殆ど残っていないことです。オーヒアやコアの森では、本来は大きな木の下に下層植物が沢山生えていたのですが、現在は牛などの草食動物に食べられてしまっていて、イオ(ハワイノスリ)に追われても、飛び込んで隠れるところがなくなってしまっているのです。幼鳥は巣立ってからは、しっかりと飛べるようになるまでは地面近くに住みます。地面に降りれば、マングースや野良猫などがいるわけです。また餌を求めて標高が低いところに移動すると蚊がいますから、鳥の病気をうつされしまいます。
いったん破壊されてしまった場所を再び適した環境にするには長い年月がかかります。現在(2006年)飼育施設には53羽いるそうですが、飼育個体数が少ないために、遺伝的な問題もあり、今後も飼育下繁殖をさせるためには様々な難関を乗り越えていかなければなりません。いつか野生復帰が実現しますように。
追記: 1993年から1996年の間に、野生のアララーの巣から卵が採集され、13羽のアララーが生まれました。1993年から1998年の間に、これらのアララーと捕獲した野生の固体の間に生まれた27羽のアララーが放鳥されましたが、そのうち21羽は死んでしまいました。残りの6羽は1998年から1999年の間に捕獲され飼育施設に戻されました。2008年1月の飼育下固体は56羽で、その後5年間の間に個体数を最低75羽にしなければ、自然界への放鳥を試みることができないそうです。
アララーの鳴き声: Yeeow, Aaawaoo, ooWAoo, ooWEE, Raaooo, rrRArr, Medley
Revised Recovery Plan for `Alalā (Jan 2009)

追記:2012年の繁殖期で、個体数が100羽を超えました!

2006-09-23 | Posted in No Comments » 

 

ネーネー(ハワイガン)について

Nene

ネーネー(Branta sandvicensis)は、キャプテン・クックがハワイに渡来したころ(1778年)には、2万5千羽ぐらいいたものが、1940年代には50羽となり、1952年には30羽だけになってしまいました。
生き残ったネーネーたちは、飼育されていた鳥です。 生き残った30羽から、個体数を増やすために人工的に繁殖させて、1949年から1978年にかけて1700羽以上放鳥されました。その後、何百羽も放鳥されています。この努力は今日でも続いています。
これまでの努力の結果、現在(2006年)ではカウアイ島、マウイ島に、モロカイ島、ハワイ島に、合計1600羽ぐらい生息しています。カウアイ島が一番多く、830羽です。ハワイ島は480羽で、その内180羽ぐらいがハワイ火山国立公園に生息しています。
絶滅寸前まで減少してしまった原因は、移入動物により捕食されるようになったことだけではなく、過剰な狩猟や、農地、牧場、住宅などのために生息に適した環境が減少してしまったこと、帰化植物が増えて、本来餌となる植物が減少してしまっているということもあります。
放鳥したネーネーには、固体識別用の足環が付いていますが、自然界で生まれたネネも捕獲されたものには足環がつけてありますが、足環がついていない鳥は、自然界で生まれたものだとわかります。
ネーネーとアメリカ北部に生息するカナダガンの祖先は同じだと言われています。50万年ぐらい前にハワイに渡ってきたガンが独特の進化をしたものがネネです。ネーネーと鳴くので、それがハワイ語名の由来です。
元々は水鳥でしたが、岩稜地帯に生息するようになったので、水掻きが半分ぐらい退化してしまっていますし、産卵場所も普通のガンとは異なります。ハワイから太平洋を渡ることをしないので、翼はカナダガンに比べると16%ほど小さく、胸の筋肉も小さいです。よく歩くので、脚はカナダガンに比べると25%ほど太めです。歩きやすい姿勢になっているので、他のガンのようにお尻を左右に大きく振りません。多にも異なる点がいくつかありますが、水場があれば泳ぎますし、V字編隊飛行するなど、残している習性もあります。
交尾期・産卵期は8月から4月まですが、雛は1月から2月に生まれる場合が多いです。この時期は比較的降水量が多い時期なので、餌が多いわけです。夏には集団で見かけることが多いですが、産卵時期が近づいてくると、つがいで行動し始めます。
地面に巣を作るので、マングースに卵を狙われてしまうのです。マングースは、畑を荒らすネズミを駆除するために、人間が持ちこんだ動物ですが、マングースは昼間活動するのに対し、ネズミは夜間にしか活動しないので、役に立たないどころか、害になっています。
ネーネーは1?6個ぐらい卵を産みます。30日ほどで孵化しますが、その間、雌が卵を温め、雄は見張りをします。雌は毎日数回餌を探しに巣から離れます。1時間ほど巣から離れている間、卵が冷たくならないように、卵を羽で覆っておくようです。雄も雌と一緒に餌を求めて遠くにいってしまうこともあるようです。
幼鳥が飛べるようになるまで3?4ヶ月かかります。幼鳥は親鳥と次の産卵時期まで一緒に行動します。産卵時期が終わると、羽が抜け変わります。その間、飛ぶことができないので、マングースや野良猫に狙われやすくなります。
大抵、雄は生後1?2年後に、雌は生後2?3年後にパートナーを見つけます。つがいになると、大抵一生相手を変えません。
飼育されているネーネーは25年ぐらい生きますが、野生のネーネーはハワイ火山国立公園の話によると、同じぐらい生きる場合もありますが、大抵は10何年だけです。
ネーネーは草の葉や種や花、オーヘロ、クーカエネーネー、プーキアヴェ、ウーレイ、ポーポロなどの実を食べます。
餌不足で餓死してしまう幼鳥が多いこと(幼鳥はたんぱく質を多く含んだ餌が必要)、巣をつくり産卵しようとするつがいが少ないこと、限られた個体数の集団から人工的に繁殖させたために種の多様性に乏しいこと、車に撥ねられ死亡するケースが多いこと(餌をやらないこと、ネーネーが道を渡ってくることがあるような場所ではスピードを落すことなど、注意しなければなりません)、生息環境にマングースや野良猫や野犬や野ブタや野ヤギなどが入ってこないようにフェンスを作ってコントロールすることが大切ですが、広範囲に渡って行うことには限界があることなど、様々な問題点があります。
今後も長い年月をかけて努力しなければなりません。
追記:ネーネーを飼育して放鳥するプログラムは2011年に終了しました。ネーネーの個体数が2000羽近くになり、今後はフィールドでの管理に重視を置いてネーネーの保護を続けていくそうです。

2006-08-29 | Posted in No Comments »